食後の血糖値対策に、注目される「酵素」

食事などで摂取した糖質が分解され、グルコースとして血中に流れることで血糖値は上がります。では、もし、そのグルコースが酵素の力で、吸収されにくい糖(オリゴ糖)に変換されたらどうなるでしょう? この記事では、食後の血糖値の上昇を抑える鍵になる・・・かもしれない!? お腹の中で難消化性のオリゴ糖をつくる酵素の可能性についてご紹介します。

■オリゴ糖に変換する酵素がある

通常、食事で摂取した糖は酵素によってグルコース(単糖)に分解され、腸で吸収されていきます。ここで注目すべきは酵素の種類! アミラーゼやグルコアミラーゼ、ラクターゼなどの酵素は糖を吸収されやすいグルコースに分解しますが、このグルコースを“吸収されにくい”糖に変換してくれる酵素もあります。

その酵素とは、トランスグルコシダーゼ。トランスグルコシダーゼはAspergillus nigerという黒麹菌などの発酵によって生成される糖転移酵素で、食餌から一度分解されたグルコースを、消化管内で食物繊維の代替となる難消化性の「オリゴ糖」に再変換します。

■ 酵素による糖の分解作用

アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ラクターゼが炭水化物を単糖に分解

トランスグルコシダーゼがグルコース(単糖)をオリゴ糖に変換

日本におけるトランスグルコシダーゼ

トランスグルコシダーゼは、日本において糖転移酵素として、長年食品分野で利用されてきました。澱粉を分解して得られるマルトース(麦芽糖)を原料としたイソマルトオリゴ糖の製造や、酒類の生産時に添加してオリゴ糖を生成することで風味を良くするためにも使用されています。その他、多くの食品の製造時に添加されていますが、一般的な食品の原材料としては見慣れない酵素だと思います。

■血糖値に影響しにくいオリゴ糖

では、腸に吸収されにくいオリゴ糖とはどんな物質なのでしょう? 実はオリゴ糖には明確な定義がなく、一般的に糖質の最小単位である単糖が3つ以上、広くは2~10個結びついた糖のことを指します。

オリゴ糖は消化酵素ではほとんど分解されず、消化・吸収されないまま大腸に届きます。そのため、摂取しても血糖値に与える影響はほとんどありません。

また、消化されず大腸まで到達したオリゴ糖はプレバイオティクスとして善玉菌の栄養源にもなります。血糖値に影響しにくく、さらに整腸作用も期待できる糖なのです。

いかがでしたか? 摂取した糖が吸収されにくいオリゴ糖に変換されると、食後の血糖値の上昇を抑えられる可能性があります。気になる食後の血糖値の対策に、グルコースを消化吸収されにくいオリゴ糖に変換してくれる酵素を含有するサプリメントの利用も、選択肢の一つになるかもしれません。